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文型を愛そう ( 医療文献の翻訳から )――論文翻訳の現場から

グラフ
By Alex Yule (CC)

英語で書かれた論文を日本語のネイティブが日本語に訳し、日本語で書かれた論文を英語のネイティブが英語に訳す。確かにこれが理想的な形だと筆者も一翻訳者として思う。しかしながら、日本語を学習する英語のネイティブはそう数が多くないため、やはり日本人が日英の翻訳を行う必要性が生じる。筆者は医学を含む自然科学の論文を中心に、英日 ・ 日英両方の翻訳に携わっているが、ここでは特に論文の日英翻訳について書いてみたい。筆者の専門上、話がやや理系の文献に偏ってしまうのはお許しいただきたい。

論文ともなれば、当然そこには日常生活ではあまり使うことのない専門用語が散りばめられることになるが、その一方で筆者が日頃英語の論文を目にしていて感じるのは、使われる文の型がほぼ決まっているということである。しかしながら、パターン化しているとはいえ、論文の文章を構成する各文は中学校の教科書に載せられている例文ほどには単純ではない。どういうことかここで立ち止まって考えてみよう。

ポスター
By Daneel
Ariantho (CC)
中学校の教科書で第五課、第六課と進んできて、第七課で受動態が出てきたとする。生徒はこの課で受動態という文法事項を学ぶわけだが、そこで挙げられる例文は、往々にして、受動態を含む文の中でも極めて単純なものである。もう少し具体的に言うと、受動態は含むが他の課で学ぶような文法事項は含まない、あるいはあまり含まない文が選ばれるのである。もちろんこのようなやり方は、基本的文法事項を一つ一つ着実に消化するという観点からして合理的ではある。

しかしながら論文は、上述の教科書のような配慮の下で書かれるわけではない。教科書の各課で説明されている諸処の文法事項が一つの文の中で複合して出てくることも普通である。具体例として、以下に論文の一節を挙げる。一つの節を構成しているが、下記の説明文をより理解していただくために、一文ずつ番号を割り当てた。

( 1 )Because of the very small scattering power of a hydrogen crystal in a diamond anvil cell, the use of a third-generation synchroton source and the growth of a single crystal in helium were previously needed to measure the equation state of H2 and D2 to 120 GPa at 300 K. ( 2 ) This X-ray approach has been extended here to low temperature. ( 3 ) Owing to the low intensity of neutron sources, the high-pressure neutron study of the hydrogens is more challenging. ( 4 ) Recent progress in pressure techniques and neutron instrumentation at the Laboratoire Léon Brillouin is used here to push the pressure limits for single-crystal neutron diffraction experiments.

ここでは受動態の文が繰り返し出てくるが、受動態文の最単純形 「 主語 + be 動詞 + 過去分詞 」 を基点として句レベルで分析してみる。

一番目と四番目の文では、「 主語 + be 動詞 + 過去分詞 」とともに、目的を表す to 不定詞句が使われており、「 主語 + be 動詞 + 過去分詞 」+「 to 不定詞句 」という構造が見られる。この構造に Because of _____ という原因 ・ 理由の副詞句と previously という時間の副詞句を加えれば一番目の文になり、here という場所の副詞句を加えれば四番目の文になる。

一番目の文の構造
「 Because of _____ 」,「 主語 + be 動詞 + 「 時間の副詞句 」 + 過去分詞 」 + 「 to 不定詞句 」
四番目の文の構造
「 主語 + be 動詞 + 過去分詞 」 + 「 場所の副詞句 」 + 「 to 不定詞句 」

百合
By Henry Heatly (CC)
先の一節の一番目あるいは四番目の文と全く同じ英文が他で出てくることはまずなさそうだが、上に示した二つの構造はよく見られる。論文を観察していけば、また違った構造も見られ、どの構造が多用されているかもわかってくる。正しい英語、英語らしい英語に翻訳するためには、どのような構造が可能なのか、そして、どの構造が多用されるのかを知っておく必要がある。上に一番目の文の構造、四番目の文の構造とは書いたが、これらは文のマクロ構造である。英語らしく文章を構成するために、このようなマクロ構造の分析は非常に重要だが、ミクロ構造の分析もやはり不可欠である。先の一節の一番目と三番目の文に見られる原因 ・ 理由の副詞句などはよい例である。日本語では「 _____の散乱能 ( scattering power ) が非常に小さい ( very small ) ため / _____の強度 ( intensity ) が低い ( low ) ため 」 といった言い方をよくするので、「 Because of the very small scattering power of _____ / Owing to the low intensity of _____ 」のような表現は、その内部構造を強く意識していかないとなかなか使いこなせるようにならない。文全体ではなく、このような局所構造にも目を向ける必要がある。英語で多用される構造は、日本人が日英翻訳を行う際にも積極的に使用すべきである。日本語の論文を英訳するにあたって、英語の論文で多用される構造をあらかじめ把握しておき、どのようにしたら日本語をそれらの構造に変換できるか考える姿勢があってもよいと思う。

初めのうちは「 Because of the very small scattering power of _____ / Owing to the low intensity of _____ 」のような表現に戸惑うかもしれないが、これらの表現も「 形容詞 + 名詞 」、「 名詞 of 名詞 」、「 Because of 名詞 / Owing to 名詞 」といったごく基本的な要素から成り立っているのである。英文ではこのような基本的要素が複合して出てくる。基本的要素と基本的要素が複合したときの構造をしっかりと目に焼き付けることが大切である。そして、どのような複合構造が多用されているかを観察していくのである。論文などはよい題材ではないかと思う。


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